◆茅ヶ崎のサーフィン史

我が国のサーフィンの普及および発展に貢献した伝説的サーファーは数知れず。とりわけその中でもここ茅ヶ崎を舞台に活躍した、本組合の初代会長ゴッデスインターナショナルの鈴木正氏のサーフィンにまつわる歴史をひも解くが、茅ヶ崎のサーフィンの歩みを辿る事になります。実証となる写真や資料をはじめ、鈴木氏の協力により氏が発行した著書を元に記述いたします。

赤い板で波に乗る一枚の絵葉書の写真に興味を惹かれた鈴木氏は、 その写真を元に、その板切れを作ってみる。グライダーの翼の要領で芯材のまわりにベニヤ板を貼り、その上にペンキを塗るというなんとも原始的なものだ。そのボードにはフィンも無く、ましてやワックスも存在せず、おおよそサーフボードとは程遠いものだった。百聞は一見に然り…目の前の海に繰り出し挑戦するも、 ボードの上に立ち上がる方法も知らず、結果は無惨なもの。 しかも苦労して作りあげたその板切れは、当時は玉石が転がっていた茅ヶ崎の浜に簡単に壊され、水が溜まって引き上げるのも一苦労だったという。 何度か修理し試みるが、やがてその一枚の絵葉書の波乗りへの興味は冷めていく。

60年代は、我が国のサーフィン時代のまさに幕開けであった。1962年、当時逗子にいた鈴木氏は、七里ヶ浜の海岸で初めて本物のサーフィンを目の当りにする。駐留軍の米国人がサーフィンをしていたのだ。本物のボードとそれを使っての沖への出かた。
そして立ち上がり、波を乗り継ぐ姿…。かつての絵葉書ではイメージできなかったことが、 現実として目の前で展開する。 その瞬間から鈴木氏のサーフィンの長い歴史が始まる。やがて、帰国するその米兵からボードを買い取り、 ボード作りの研究材料にする。初めは硬質発砲スチロールをシェイプして新聞紙を巻き、 樹脂で固めるという方法であった。しかし、重さが15kgにも達し失敗に終わる。 やっと本物に近いサーフボードができたのはウレタン素材の発見であった。家庭製品用に作られた90cm立方体のブロック3個をボンドで繋ぎ合わせ、 ストリンガーを入れ、約2m70cmの長さの固まりにしてから削り出した。 かくしてフォーム、樹脂、ストリンガーと素材が整い、サーフボードと言えるものがこの時始めて完成した。

◆本場のサーフィン技術の導入

鈴木氏が25歳を前にようやく憧れのアメリカに向かう。当時はまだ簡単にアメリカに入国すらできなかった時代。かつて日本にサーフトリップにやってきて、鈴木氏宅にステイしていたビル・ヒューリーにコンタクトをとる。 日本でサーフィンするためにやってきたビルをアメリカ大使館が鈴木氏に紹介し、湘南や千葉を案内したのが縁だった。 カリフォルニア・ハンティントンに住むビルから届いた「Welcome!」の手紙でアメリカ大使館がビザを発行し取得する。 そうして渡米してビルの元に身を寄せるが、彼はハンティントンでは有名人だった。デビット・ヌヒワをはじめ、クレイグ・ターカーなど多くのサーファーのボードを削る名シェイパーだった。鈴木氏はビルがシェイプするプラスティック・ファンタスティックで掃除係として働き、仕事の合間に材料を購入して自分のボードをシェイプし始める。日本での独学と研究で、 多少削れるようになっていたからだ。3本目のボードで彼から技術を認められ、 オーダーボードの受注を請負う。シェイパー鈴木正の誕生である。 5ヶ月間のステイの中で鈴木氏は、サーフィンに関する全てを学び、シェイプのための道具を買い揃えカリフォルニアを後にする。 日本に本物のサーフィン技術が鈴木氏によってもたらされた。

◆日本で最初のサーフボード工場とショップ

帰国前に鈴木正氏は一ヶ月間ハワイに立ち寄っている。マカハ・インターナショナルに参加するデビット・ヌヒワに誘われたためだ。GSでアルバイトしながらの滞在である。帰国した鈴木氏は、ゴッデスの前身で湘南で最初と言われているサーフボード工場を兼ねた「湘南サーフショップ」 を開店。1968年、当時の生産能力は一週間8本が限度。瞬く間に売り切れてしまったという。 この頃、コンペティションでも1967年第2回全日本サーフィン選手権大会で2位、翌年の第3回では優勝、第6回・3位、第7回・2位と優秀な成績を残し、当時を代表するコンペティターでもあった。
さらに1969年日本人では初めてハワイのマカハインターナショナルサーフィン選手権に出場するという快挙を成し遂げた。そうしたキッカケが日本の近代サーフィンの発展に拍車をかけた。

そして、70〜80年代にかけ、数多くの個性的なサーフショップが茅ヶ崎にも次々と誕生していく。

 


(取材協力:ゴッデスインターナショナル代表 鈴木 正氏、著書:講談社出版『サーフィン』より)
(取材協力/写真提供:ホームページ「WONDERFUL HOUSE」及び「ワンダフルハウス図書館」
      管理者 糸井寿史氏 http://www5a.biglobe.ne.jp/wo-house/

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